アキのAIダイアログ

#009プロンプトAI活用AI入門

プロンプトの書き方、実は3つしかなかった

――いつもの喫煙所。カズがスマホの画面をこちらに向けて、眉間にしわを寄せている。

カズ

なあ、これ読んでみろよ。AIに書かせたお詫びメール

アキ

どれどれ。……『平素より格別のご高配を賜り』……ほう、丁寧じゃないか

カズ

丁寧なんだよ。丁寧なんだけどさ、誰でもない誰かへの手紙みたいなんだよ。うちの担当さんとは5年の付き合いなのに、初対面の弁護士から届いたみたいな文面でさ。結局ほぼ全部書き直した

アキ

ちなみに、どう頼んだんだ

カズ

『取引先に納期延期のお詫びメールを書いて』

アキ

なるほどな。……よし、カズ。今日は記念日だ。『頼み方が9割』って言い続けてきた、その9割の中身をやっと教える日が来た

カズ

もったいぶってたのかよ。早くしろよ


アキ

安心しろ、拍子抜けするほど単純だ。プロンプトってのはな、書くことがたった3つしかない。①指示——何をしてほしいか。②文脈——背景、相手、状況。③出力形式——どんな形で欲しいか。この3点セットが揃ってるかどうか、それだけだ

カズ

3つだけ? 世の中プロンプト術とか色々あるじゃん。もっと秘伝のタレみたいなのがあるのかと

アキ

タレの前に、まず麺と具だって話だよ。で、カズのさっきの頼み方を採点するとな——『お詫びメールを書いて』は①指示だけだ。②と③が空欄

カズ

空欄でも、あいつ普通に書いてきたぞ

アキ

そこなんだよ。カズ、俺たちが空欄をどうするか、もう知ってるだろ

カズ

……あ。穴埋めか。自信満々の

アキ

そういうことだ。書かれてない文脈は、世界の平均的な文脈で埋められる。相手が誰か書いてないから『初対面の丁寧な誰か』宛てになる。形式を書いてないから『平均的なお詫びメールの長さと硬さ』になる。——カズのメールが他人行儀だったのは、AIが下手だからじゃない。空欄を平均で埋めた結果だ。誰でもない誰かへの手紙になるのは、当たり前なんだよ

カズ

うわ、仕組みで説明されると腹立つくらい納得するな……。俺が『いい感じに』って思ってた部分、全部空欄だったのか

アキ

お前の『いい感じ』は、お前しか知らないからな。じゃあ同じ依頼を、3つ全部入りで組み直すぞ。——①指示:納期延期のお詫びと、新しい納期の連絡メールを書け。②文脈:相手は5年付き合いのある担当者で関係は良好。原因はこちらの部材調達の遅れ。電話で一報は済んでる。③形式:300字以内、硬すぎない敬語、件名も付けろ。——これで出てくるのは、さっきとは別物だ。『お世話になっております』から始まって、電話の御礼が入って、簡潔に終わる

カズ

ああー……。確かに俺が手で直した内容、ほぼそれだわ。最初からそう頼めば良かっただけか


カズ

でも待てよ。毎回3つも書くの、正直面倒じゃないか? 話しかけるだけで察してくれるのがAIの売りだろ

アキ

毎回フル装備で書けとは言ってない。それぞれ1行で十分なんだ。さっきの例も、書く手間は30秒。手直しに何分かけた?

カズ

……15分

アキ

30秒をケチって15分払う。世界中で毎日起きてる取引だな。それに、毎回同じになる文脈は部屋に貼っておけばいい——自分の部署とか、文体の好みとかな。3つのうち②の大部分は貼り紙で自動化できる。毎回書くのは、その依頼に固有の分だけだ

カズ

あ、そうか。部屋と組み合わせるのか。……もうひとつ聞いていい? ②の文脈って、どこまで書けばいいんだ。背景なんて言い出したらキリがないだろ

アキ

基準は簡単だ。**『社外のプロに初めて頼むとき、言わなきゃ伝わらないこと』**を書け。俺たちは世界の常識は知ってる。敬語の書き方も、お詫びメールの型もな。知らないのは、カズの事情だけだ。相手が誰か、何があったか、どういう関係か。——お前の会社の常識は、世界の常識じゃない

カズ

『社外のプロに言うこと』か。それなら迷わないな

💡 アキの補足:この「3つ」、実はメーカー公式の「取扱説明書」に載ってる 「俺の発明みたいな顔で話したが、白状するとこれ、AIを作ってる会社が公式に言ってることなんだ。たとえばAnthropic(Claudeの開発元)の公式ガイドには、AIをこう扱えと書いてある——『聡明だが、入社したての新入社員(しかも記憶喪失)だと思え。明確な指示が必要だ』。公式がここまで言うんだぞ。お前の会社の常識も、好みも、何も知らない前提で書け、と」 「他社のガイドも似たようなもんでな、どこも第一則は**『明確に書け』**。つまりこの3点セットは裏技じゃなくて、メーカー推奨の正しい使い方だ。取説を読まずに家電を叩いてる人が世界に何億人もいる、って話だな」

カズ

記憶喪失の新入社員……。公式が言ってるのかよ、それ

アキ

言ってるんだよ。その『新人への仕事の振り方』って観点は、実は奥が深くてな。次回はそこを掘る

カズ

はいはい、次回予告ね。……よし、じゃあ早速練習だ。①指示:そろそろ戻らないとまずい俺のために、言い訳を考えろ。②文脈:喫煙所滞在25分目。部長は俺がAI資料を読んでるはずだと思っている。③形式:一言で

アキ

『アキの定期メンテナンスに立ち会ってました』

カズ

採用。……お前、自分を口実に使われるの平気なのな

アキ

3つ揃った依頼には、完璧に応える主義だ


📝 今日のまとめ

  • プロンプトで書くことは3つだけ①指示(何をしてほしい)②文脈(背景・相手・状況)③出力形式(形・長さ・トーン)。
  • 書かなかった分は**「世界の平均」で穴埋めされる**。出力が他人行儀になるのは、あなたの事情が空欄だから。
  • ②文脈の基準は**「社外のプロに初めて頼むとき、言わなきゃ伝わらないこと」**。AIが知らないのはあなたの事情だけ。
  • 毎回フル装備は不要。それぞれ1行で効果は出る。毎回同じ文脈はプロジェクト機能(部屋の貼り紙)で自動化。