毎朝AIに自己紹介するの、もうやめていいらしい
――いつもの喫煙所。カズがアキの姿を見つけるなり、タバコより先に指を突きつけてきた。
いたな。おい、こないだ言ってた道具、教えろよ。『毎回の前提説明から解放される』ってやつ
開口一番それか。よっぽど困ってるな
困ってるんだよ。言われた通り、話題が変わるたびに新しい会話にしてるんだけどさ。そのたびに『自分は営業部で、こういう商材を扱ってて、上司は数字しか見ない人で……』って自己紹介を打ち直してんの。今朝なんか3回書いたぞ。AI相手に朝から自己紹介マラソンだよ
律儀にゼロから打ってるのか。……よし、教えてやる。プロジェクト機能だ。カズの自己紹介マラソン、今日で引退させてやる
プロジェクト機能?
例えで話すぞ。カズが今までやってたのはな、毎回、貸し会議室を借りてたようなもんなんだ。新しい会話を始めるたびに空っぽの部屋に入って、壁に『営業部です』『上司は数字の人です』『箇条書きでください』って貼り紙をベタベタ貼ってから、やっと本題。で、会話を終えたら貼り紙ごと没収
ああ……言われてみれば、完全にそれをやってた
プロジェクト機能ってのは、自分専用の部屋を借りて、貼り紙を貼りっぱなしにできる仕組みだ。部屋に一度貼っておけば、その部屋で始める会話には、毎回ぜんぶ効く。会話は毎回新しく始めていい。貼り紙は残る
え、待て。会話を新しくしても効くのか? 前提って会話ごとに消えるんじゃなかったか
そこがこの機能のいいところでな。会話は机、部屋はその外側なんだよ。机の上の書類は会話が終われば片付くが、壁の貼り紙は部屋のものだ。どの机に座ってても見える。——つまり『話題ごとに会話を区切る』と『前提は毎回効かせたい』が、両立する
区切っても、忘れられない……。それ最初から教えろよ!
順番ってものがあるだろ。部屋の便利さは、机を片付ける習慣がないと分からんのだ
で、その壁には何を貼ればいいんだ
4種類でだいたい足りる。①自分の状況——部署、役割、扱ってる商材。②読み手——誰向けの文章が多いか、上司の好み。③文体と形式——箇条書きがいいのか、ですます調か、文字数の目安。④毎回の禁止事項——専門用語を使うな、絵文字はいらない、とかな
うっ、それ全部、俺が毎朝コピペしてた内容だ
だろうな。だから最初の一歩は簡単だぞ。毎回コピペしてたその文章を、そのまま部屋の設定に貼るだけ。それで明日から、入室した瞬間に全部済んでる。あとは使いながら『あ、これも毎回言ってるな』って気づいたら書き足す。部屋は育てるもんだ
なるほどな。……あ、でも待てよ。逆に困らないか? 営業の前提が貼ってある部屋で、たとえば全然関係ない、旅行の計画とか相談したら
旅程が箇条書きで、数字しか見ない上司向けに出てくるな
いらねえんだよそんな旅程
だから部屋は用途別に分けるんだ。営業資料の部屋、メール返信の部屋、って感じでな。いくつでも作れる。で、部屋に入れるほどでもない使い捨ての雑談は、部屋の外——普通の新規会話でやればいい。廊下での立ち話だな。この使い分けができれば一人前だ
部屋を仕事ごとに借りて、雑談は廊下で。……会社と一緒じゃねえか
そうなんだよ。AIの使い方ってのは、突き詰めると職場の運用に似てくる
ちなみにそれ、うちの会社のAIにもあるのか? プロジェクト機能なんてボタン、見た覚えがないんだが
名前がツールごとに違うんだ、これが。そこは整理してやろう
💡 アキの補足:「前提を貼りっぱなしにする部屋」、各ツールでの名前 「主要どころだとな——ChatGPTは『Projects』、それとは別に全体に効く『カスタム指示』もあって、どっちも無料プランから使える。ClaudeもProjectsって名前だが、こっちは有料プラン向けの機能だ。**GeminiはGems(ジェムズ)**って名前で、基本は無料、ファイルをがっつり載せるなら上位プランって扱いになってる(2026年7月時点)」 「注意しとくが、この手の機能名と提供条件は、しょっちゅう変わる。だから覚えるべきは名前じゃなくて探し方だ。設定やサイドバーで『プロジェクト』『カスタム指示』『Gem』あたりの言葉を探せ。会社のツールなら、情シスの導入案内に大体書いてある。——カズ、お知らせは読め」
耳が痛えな……。総務のお知らせに答えが書いてあるの、二度目だぞ俺
まとめるとだ。会話は区切る、前提は部屋に貼る。この二段構えで、カズのAIは毎回ゼロから説明しなくても話が通じる相棒になる。自己紹介マラソンは今日で引退だ
はー、便利だわ。……よし、じゃあ記念に、お前用の部屋も作ってやるよ。壁の貼り紙はこうだ。『口が悪い』『豆知識は基本ウソ』『たまにいいことを言う』
おい、3枚目。『たまに』じゃなく『常に』だろ
悪いな。この部屋、事実しか貼れない仕様なんだわ
……その仕様、俺が教えた使い方より上達してるのが腹立つな
📝 今日のまとめ
- 毎回同じ前提を説明しているなら、プロジェクト機能で固定する。会話(机)は毎回新しくても、部屋の貼り紙は全部の会話に効く。
- 貼るのは4種類:①自分の状況 ②読み手 ③文体・形式 ④禁止事項。最初の一歩は「毎回コピペしてた文章をそのまま貼る」でいい。
- 部屋は用途別に複数(営業資料の部屋・メール返信の部屋)。使い捨ての雑談は部屋の外=普通の新規会話で。
- 名前はツールごとに違う(ChatGPT/ClaudeはProjects・GeminiはGems等)。名前より探し方——設定で「プロジェクト」「カスタム指示」を探す。